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梓弓さこそは反りの高からめ
はるほどもなくかへるべしやは

歌の意味
梓弓の反りが高いように、さぞ気位が高いのであろう。だからといって、弓を張るまもなく反り返るように、春になったばかりで帰ってしまってよいものか。
鑑賞
巻第九 雑歌上 557

 梓弓の反りが高いように、あなたはさぞ気位が高いのだろうが、だからといって、弓を張るまもなく反り返るように、春になったばかりなのに帰ってしまってよいものだろうか、と詠む歌である。弓にちなむ語を連ねて、春の訪れとともにすぐに帰っていく相手を引き留めようとしている。
 本巻の第五百六十四首も「さこそは…ならめ…かへるべしやは」という同じ型で詠まれており、早々に帰ろうとする相手を引き留める趣向が共通している。

 初句「梓弓」は、梓の木で作った弓の意で、「張る」「引く」「反る」などにかかる枕詞である。
 二句「さこそは反りの」は、さぞ反りがの意で、係助詞「こそ」が三句の「め」と係り結びをなしている。弓の反りに、相手の気位の高さを重ねている。
 三句「高からめ」は、高いのであろうの意で、推量の「む」の已然形「め」で二句の「こそ」を受けて結び、逆接的に下の句へ続いている。
 四句「はるほどもなく」の「はる」は、弓を「張る」意と、季節の「春」とを掛けており、平仮名のままとした。
 結句「かへるべしやは」の「かへる」は、弓が「反る」意と、「帰る」意とを掛けており、平仮名のままとした。「やは」は反語を表す。本巻の第五百六十四首の結句と同じである。

あづさゆみ:梓の木で作った弓。「張る」「引く」などにかかる枕詞
はる:弓を「張る」意と、季節の「春」を掛ける
かへる:弓が「反る」意と、「帰る」意を掛ける
出典
金葉和歌集
前の歌
鷺のゐる松原いかに騒ぐらむ しらげはうたて里とよむなり
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無き名にぞ人のつらさは知られける 忘られしには身をぞ恨みし