思ひきや雲居の月をよそに見て
心の闇に惑ふべしとは
- 歌の意味
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思ってもみなかった。宮中の月を遠くよそから眺めて、子を思う心の闇に迷うことになろうとは。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 571
宮中の月を遠くからよそごとのように眺めて、子を思う心の闇に迷うことになろうとは、思ってもみなかった、と詠む歌である。かつては宮中で月を見ていた身が、今は宮中から遠ざかり、子を思う親心の闇に惑っている嘆きを表している。
「心の闇」は、『後撰和歌集』の藤原兼輔の「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」で知られ、子を思う親の迷いをいう。前歌の第五百七十首に続いて宮中を雲で表し、宮中から遠ざかった身の嘆きを詠んでいる。
初句「思ひきや」は、思っただろうか、思いもしなかったの意で、過去の「き」に係助詞「や」が付いて反語を表している。ここで句切れとなる初句切れの歌で、倒置により結句の「とは」へ続いている。
二句「雲居の月を」は、宮中の月をの意で、「雲居」は宮中を表す。本巻の第五百二十六首の「雲居の桜」と同じく、宮中への思いを込めている。
三句「よそに見て」は、遠くよそごととして見ての意である。
四句「心の闇に」は、子を思う親の心の迷いにの意で、二句の「月」の光と「闇」とが対をなしている。
結句「惑ふべしとは」は、迷うことになろうとはの意で、初句の「思ひきや」に倒置の形でつながっている。
くもゐ:雲のある所の意から転じて、宮中
こころのやみ:子を思うあまり分別を失う親の心の迷い
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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うらやまし雲の梯立ち返り 再び昇る道を知らばや
- 次の歌
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身の憂さも問ふ一言に塞かれつつ こころつくしの道はとまりぬ