亡き影にかけける太刀もあるものを
さやつかの間に忘れ果てける
- 歌の意味
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亡き人の墓に太刀を掛けて約束を果たしたという例もあるのに、そのようにほんのわずかの間に、すっかり忘れてしまったのだなあ。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 575
亡き人の墓に太刀を掛けて生前の約束を果たしたという例もあるのに、あなたはそのようにほんの短い間にすっかり忘れてしまったのだなあ、と詠む歌である。約束を守らずに忘れてしまった相手を、太刀にちなむ語を連ねてとがめている。
中国春秋時代の呉の季札が、徐の君が自分の剣を欲しがっていたことを心に留め、使いの帰りに徐の君がすでに亡くなっていたので、その墓の木に剣を掛けて去ったという故事を踏まえている。前歌の第五百七十四首と同じく「かけ」の語をめぐって詠まれている。
作者の「俊頼」は、大納言源経信の子で、白河院の命を受けて本集を撰進した源俊頼である。
初句「亡き影に」は、亡き人の霊前にの意で、季札が徐の君の墓に剣を掛けた故事を踏まえている。「影」は二句の「かけ」と同音を重ねている。
二句「かけける太刀も」は、掛けたという太刀もの意で、過去の「けり」の連体形が伝え聞いた故事を表している。前歌の第五百七十四首の「日陰」と同じく「かけ」の音を用いている。
三句「あるものを」は、あるのにの意で、逆接の接続助詞「ものを」が用いられている。
四句「さやつかの間に」の「さや」は、太刀の「鞘」と、そのようにの意の「さ」に「や」が付いた語とを掛け、「つか」は太刀の「柄」と、「束の間」とを掛けており、平仮名のままとした。二句の「太刀」と縁語をなしている。
結句「忘れ果てける」は、すっかり忘れてしまったのだなあの意で、過去の「けり」の連体形で余韻を残して結んでいる。
さや:太刀の「鞘」と、そのようにの意の「さや」を掛ける
つか:太刀の「柄」と、「束の間」の「束」を掛ける
- 作者
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源俊頼
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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日陰にはなき名立ちけり小忌衣 着て見よとこそ言ふべかりけれ
- 次の歌
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見し人はひとり我が身に添はねども 後れぬものは涙なりけり