人並みに心ばかりは立ち添ひて
誘はぬわかのうらみをぞする
- 歌の意味
-
人並みに心だけは皆に付き添って行ったが、誘ってくれなかったことに、和歌の浦を見るのではなく、恨みごとを言うことだ。
- 鑑賞
-
巻第九 雑歌上 578
人並みに心だけはみなに付き添って出かけたけれども、自分を誘ってくれなかったので、和歌の浦を見るかわりに恨みごとを言うことだ、と詠む歌である。人々が和歌の浦に出かけた際、あるいは歌の催しに自分が誘われなかったことを、「和歌の浦」と「浦見」「恨み」の掛詞を用いて、たわむれに恨んでいる。
「わか」に、歌枕の「和歌の浦」と「和歌」、また「我が」の意を響かせているとみられる。
初句「人並みに」は、人並みにの意で、他の人々と同じようにの意である。
二句「心ばかりは」は、心だけはの意で、副助詞「ばかり」が限定を表している。
三句「立ち添ひて」は、付き添っての意で、心だけは一緒に出かけたことをいう。
四句「誘はぬわかの」の「わか」は、紀伊国の歌枕の「和歌の浦」の「和歌」と、自分の意の「我が」とを掛けており、平仮名のままとした。
結句「うらみをぞする」の「うらみ」は、浦を見る意の「浦見」と、「恨み」とを掛けており、平仮名のままとした。係助詞「ぞ」を受けて連体形「する」で結ぶ係り結びとなっている。
わか:紀伊国の歌枕の「和歌の浦」の「和歌」と、「我が」を掛ける
うらみ:浦を見る意の「浦見」と、「恨み」を掛ける
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
葉隠れてつはると見えしほどもなく こはうみうめになりにけるかな
- 次の歌
-
ことわりや曇ればこそは真澄鏡 映れる影も見えずなるらめ