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身の憂さを思ひしとけば冬の夜も
とどこほらぬは涙なりけり

歌の意味
我が身のつらさを思い解いていくと、氷も解けないはずの冬の夜でさえ、滞ることなく流れるのは涙であったことだ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 584

 我が身のつらさを思い解いていくと、すべてが凍りつく冬の夜であっても、凍らずに滞りなく流れるのは涙であった、と詠む歌である。冬の夜に我が身の不遇を思い返すと、とめどなく涙が流れることを、凍らない涙という趣向で表している。
 本巻の第五百三十四首が、春に解けた氷とその後に滞る物事を詠んだのに対し、本歌は冬の夜にも滞ることのない涙を詠んでおり、「解く」「とどこほる」の語が響き合っている。

 初句「身の憂さを」は、我が身のつらさをの意で、本巻の第五百七十二首の初句「身の憂さも」と同じ語である。
 二句「思ひしとけば」の「とけ」は、思いを「解く」意と、氷が「解く」意とを掛けており、平仮名のままとした。副助詞「し」が強調を添えている。
 三句「冬の夜も」は、すべてが凍りつく冬の夜もの意である。
 四句「とどこほらぬは」は、滞らないのはの意で、凍らずに流れることをいう。本巻の第五百三十四首の結句「とどこほるらむ」と響き合っている。
 結句「涙なりけり」は、涙であったことだの意で、詠嘆の「けり」で結んでいる。本巻の第五百七十六首の結句と同じ句である。

とく:思いを「解く」意と、氷が「解く」意を掛ける
とどこほる:物事が順調に進まない、つかえる。また水が凍って流れない
作者
よみ人しらず
出典
金葉和歌集
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