古典和歌stream

さりともとかく眉墨のいたづらに
心細くも老いにけるかな

歌の意味
それでもいつかはと期待して眉墨を描いてきたが、それもむなしく、心細いままに老いてしまったことだ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 586

 いくらなんでもいつかはと期待して眉墨を描き続けてきたが、それもむなしく、心細いままに年老いてしまった、と詠む歌である。眉を整えて人を待つ女性の姿に託して、いつかは報われると期待しながら、官途に恵まれないまま老いてしまった我が身を嘆いている。
 前歌の第五百八十五首に続いて老いの嘆きを詠んでいる。本巻の巻末近くの第六百二首でも、作者は我が身ひとつが恵みから取り残される嘆きを詠んでいる。
 作者の「俊頼」は、大納言源経信の子で、白河院の命を受けて本集を撰進した源俊頼である。

 初句「さりともと」は、いくらなんでもいつかはとの意で、期待を表している。
 二句「かく眉墨の」の「かく」は、眉墨を「描く」意と、このようにの意の「かく」とを掛けており、平仮名のままとした。
 三句「いたづらに」は、むなしくの意である。
 四句「心細くも」は、心細いままにの意で、係助詞「も」が詠嘆を添えている。眉墨の「細」く描く眉を響かせている。
 結句「老いにけるかな」は、老いてしまったことだの意で、完了の「ぬ」と詠嘆の「けり」に終助詞「かな」が付いている。

まゆずみ:眉を描くための墨
かく:眉墨を「描く」意と、このようにの意の「かく」を掛ける
作者
源俊頼
出典
金葉和歌集
前の歌
昔にもあらぬ姿になりゆけど 嘆きのみこそ面変はりせね
次の歌
心こそ世をば捨てしか幻の 姿も人に忘られにけり