- 歌の意味
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心だけは世を捨てたのだが、幻のようにはかないこの身の姿までも、人に忘れられてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌上 587
世を捨てたのは心だけのつもりであったが、幻のようにはかないこの身の姿までも、人々に忘れられてしまった、と詠む歌である。出家して心は世を離れたものの、身まで人々から忘れられていくことに寂しさを覚える、修行者の孤独を表している。
本巻の第五百三十六首でも、作者は誰が我が身を思い出してくれるだろうかと、人に忘れられていく孤独を詠んでいる。
作者の「行尊」は、参議源基平の子で、園城寺の僧として大僧正に至り、修験者としても名高い歌人である。
初句「心こそ」は、心だけはの意で、係助詞「こそ」が二句の「しか」と係り結びをなしている。
二句「世をば捨てしか」は、世を捨てたのだがの意で、過去の「き」の已然形「しか」で初句の「こそ」を受けて結び、逆接的に下の句へ続いている。
三句「幻の」は、幻のようにはかないの意である。
四句「姿も人に」は、身の姿までも人にの意で、初句の「心」と対をなしている。
結句「忘られにけり」は、忘れられてしまったことだの意で、受身の「る」に完了の「ぬ」、詠嘆の「けり」が付いている。
- 作者
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行尊
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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さりともとかく眉墨のいたづらに 心細くも老いにけるかな
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草の葉のなびくも待たず露の身の 置きどころなく嘆くころかな