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あはれまむと思ふ心は広けれど
はぐくむ袖の狭くもあるかな

歌の意味
いつくしもうと思う心は広いけれど、育み包み込む袖は狭いことだ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 594

 あなたをいつくしもうと思う心は広いけれども、育み包み込むはずの私の袖は狭いことだ、と詠む歌である。相手を慈しみ守りたいという思いは大きいものの、自分の力が及ばないことを、袖の狭さにたとえて嘆いている。
 心の広さと袖の狭さとを対比させ、思いと力との隔たりを表している。

 初句「あはれまむと」は、いつくしもうとの意で、意志の「む」が用いられている。字余りの句となっている。
 二句「思ふ心は」は、思う心はの意である。
 三句「広けれど」は、広いけれどもの意で、形容詞の已然形に逆接の「ど」が付いている。
 四句「はぐくむ袖の」は、育み包み込む袖のの意で、「はぐくむ」は親鳥が羽で雛を包んで育てることに由来する語である。
 結句「狭くもあるかな」は、狭いことだの意で、三句の「広けれ」と対をなし、詠嘆の終助詞「かな」で結んでいる。

はぐくむ:羽で包んで育てる、いつくしみ育てる
出典
金葉和歌集
前の歌
石畳ありけるものを君にまた しくものなしと思ひけるかな
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世の中は憂き身に添へる影なれや 思ひ捨つれど離れざりけり