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その夢を問はば嘆きやまさるとて
驚かさでも過ぎにけるかな

歌の意味
その夢のような出来事を尋ねたら、かえって嘆きがまさるだろうと思って、便りをして驚かせることもせずに過ごしてしまったことだ。
鑑賞
巻第十 雑歌下 616

 その夢のようにはかない出来事について尋ねたら、かえって相手の嘆きがまさるだろうと思い、便りもせずに過ごしてしまった、と詠む歌である。身内を亡くした人への弔問の便りが遅れたことを、相手の悲しみを思いやった結果であると伝えている。
 「夢」に人の死を、「驚かす」に夢から覚ます意を響かせており、次歌の第六百十七首を挟んで、第六百十八首でも夢から「覚むる」ことが詠まれている。
 作者の「匡房」は、大江成衡の子で、権中納言、大宰権帥となった大江匡房である。当代随一の学者として知られ、江帥と呼ばれた。小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「その夢を」は、その夢をの意で、夢のようにはかない人の死を指している。
 二句「問はば嘆きや」は、尋ねたならば嘆きがの意で、未然形に接続助詞「ば」が付いて仮定を表す。係助詞「や」が疑問を表し、三句の連体形「まさる」で結ぶ係り結びとなっている。
 三句「まさるとて」は、まさるだろうと思っての意である。
 四句「驚かさでも」は、便りをして驚かせることもしないでの意で、打消の接続助詞「で」が用いられている。「驚かす」は、夢から覚ます意で「夢」の縁語となっている。
 結句「過ぎにけるかな」は、過ごしてしまったことだの意で、完了の「ぬ」と詠嘆の「けり」に終助詞「かな」が付いて結んでいる。

おどろかす:目を覚まさせる。転じて、便りをして相手の注意をひく、見舞う
作者
大江匡房
出典
金葉和歌集
前の歌
たらちめのなげきを積みて我がかく おもひの下になるぞ悲しき
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