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夢にのみ昔の人をあひ見れば
覚むるほどこそ別れなりけれ

歌の意味
夢の中でばかり亡き昔の人に逢っているので、夢から覚めるときこそが、別れであることだ。
鑑賞
巻第十 雑歌下 618

 亡き昔の人には夢の中でしか逢えないので、その夢から覚めるときこそが、あの人との別れなのだ、と詠む歌である。夢で逢うたびに覚めて別れを繰り返す悲しみを、簡潔に表している。
 本巻の第六百十六首でも「夢」が人の死をたとえて詠まれており、本歌は夢に亡き人を見る歌である。夢から覚めることは、本巻の第六百三十首にも詠まれている。
 作者の「永縁」は、大蔵大輔藤原永相の子で、興福寺の僧として権僧正に至った人物である。ほととぎすの歌で名高く、初音の僧正と呼ばれた。

 初句「夢にのみ」は、夢の中でばかりの意で、副助詞「のみ」が、現実には逢えないことを示している。
 二句「昔の人を」は、亡き昔の人をの意である。
 三句「あひ見れば」は、逢っているのでの意で、已然形に接続助詞「ば」が付いて確定条件を表す。
 四句「覚むるほどこそ」は、夢から覚めるときこその意で、係助詞「こそ」が結句に係る。本巻の第六百三十首の三句「夢覚めて」にも通じている。
 結句「別れなりけれ」は、別れであることだの意で、係助詞「こそ」を受けて詠嘆の「けり」の已然形「けれ」で結ぶ係り結びとなっている。

あひみる:対面する、逢う
作者
永縁
出典
金葉和歌集
前の歌
いにしへは月をのみこそながめしか 今は日を待つ我が身なりけり
次の歌
露の身の消えもはてなば夏草の ははいかにしてあらむとすらむ