古典和歌stream

色も香も空しと説ける法なれど
祈るしるしはありとこそ聞け

歌の意味
色も香もすべて空であると説く仏法ではあるが、祈れば効験はあると聞いている。
鑑賞
巻第十 雑歌下 626

 色も香もすべては空であると説く仏法ではあるけれども、祈ればその効験はあると聞いている、と詠む歌である。万物は実体のない空であると説く仏の教えと、祈りに応じて現れる霊験との間の矛盾をとらえ、それでも仏法の力を頼む心を表している。
 「色」は仏教で形あるものすべてを指し、般若心経の「色即是空」の教えを踏まえている。前歌の第六百二十五首の雨乞いの歌に続き、祈りの効験を詠む歌が置かれている。
 作者の「忠通」は、関白藤原忠実の子で、摂政関白太政大臣となり、法性寺入道と呼ばれた藤原忠通である。小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「色も香も」は、色も香もの意で、花の色香に、仏教でいう形あるものすべての意を重ねている。
 二句「空しと説ける」は、空であると説いているの意で、存続の「り」の連体形が用いられている。般若心経の「色即是空」を踏まえている。
 三句「法なれど」は、仏法であるけれどもの意で、接続助詞「ど」が逆接を表している。
 四句「祈るしるしは」は、祈ることの効き目はの意である。前歌の第六百二十五首の雨乞いの祈りに通じている。
 結句「ありとこそ聞け」は、あると聞いているの意で、係助詞「こそ」を受けて已然形「聞け」で結ぶ係り結びとなっている。

のり:仏法、仏の教え
しるし:効き目、霊験
作者
藤原忠通
出典
金葉和歌集
前の歌
天の川苗代水にせき下せ 天降ります神ならば神
次の歌
見しままに我は悟りを得てしかば 知らせで取ると知らざらめやは