心には厭ひはてつと思ふらむ
あはれいづくも同じ憂き世を
- 歌の意味
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心の中では、すっかり世を厭い捨てたと思っているのだろう。ああ、どこにいても同じつらい世であるのに。
- 鑑賞
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巻第十 雑歌下 629
心の中では、すっかり世を厭い捨てたと思っているのだろうが、ああ、どこへ行っても同じつらい世であるのに、と詠む歌である。世を逃れたと思う人に、どこにいてもこの世の憂さからは逃れられないと、仏法の立場から諭している。
本巻の第六百十四首は世を背いて出家した人を思う歌であったが、本歌は世を厭い捨てたと思う心そのものを問い直している。
初句「心には」は、心の中ではの意である。
二句「厭ひはてつと」は、すっかり嫌って捨て去ったとの意で、完了の「つ」が用いられている。
三句「思ふらむ」は、思っているのだろうの意で、現在推量の「らむ」で言い切る三句切れの歌である。
四句「あはれいづくも」は、ああ、どこもの意で、感動詞「あはれ」が嘆息を表している。
結句「同じ憂き世を」は、同じつらい世であるのにの意で、接続助詞「を」が逆接を表し、言いさして余情を残している。三句以前と倒置になっている。
いとひはつ:すっかり嫌って捨て去る
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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いさぎよき空の気色を頼むかな 我惑はすな秋の夜の月
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阿弥陀仏と唱ふる声に夢覚めて 西へ流るる月をこそ見れ