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法のため担ふ薪にことよせて
やがて憂き世をこりぞはてぬる

歌の意味
仏法のために背負う薪にかこつけて、そのまま、このつらい世にはすっかり懲りてしまったことだ。
鑑賞
巻第十 雑歌下 635

 仏法のために背負って運ぶ薪にかこつけて、そのまま、このつらい世にはすっかり懲りてしまった、と詠む歌である。法華経提婆達多品に、釈迦が前世で仙人に仕えて薪を採り、水を汲んで法華経を得たと説かれることを踏まえ、薪を「樵る」と世に「懲る」とを掛けて、仏道に入り世を厭う心を表している。
 同じ提婆達多品の話は、拾遺集に収められた大僧正行基の作と伝える「法華経を我が得しことは薪こり菜摘み水汲み仕へてぞ得し」にも詠まれている。次歌の第六百三十六首も、同じ話の水を汲むことを詠んでいる。

 初句「法のため」は、仏法のためにの意である。
 二句「担ふ薪に」は、背負って運ぶ薪にの意で、提婆達多品の薪を採る話を踏まえている。
 三句「ことよせて」は、かこつけての意である。
 四句「やがて憂き世を」は、そのまま、つらい世をの意で、副詞「やがて」が、そのまますぐにの意を表している。
 結句「こりぞはてぬる」は、すっかり懲りてしまったの意で、薪を「樵る」意と、世に「懲る」意を掛けている。係助詞「ぞ」を受けて、完了の「ぬ」の連体形で結ぶ係り結びとなっている。

になふ:肩にかついで運ぶ
ことよす:かこつける、口実にする
こる:木を切る意の「樵る」と、懲りる意の「懲る」を掛ける
出典
金葉和歌集
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吹き返す鷲の山風なかりせば 衣の裏の玉を見ましや
次の歌
今日ぞ知る鷲の高嶺に照る月を 谷川汲みし人の影とは