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いかにして衣の玉を知りぬらむ
思ひもかけぬ人もある世に

歌の意味
どのようにして衣の裏の玉を知ったのだろうか。思いもかけずにいる人もいる世の中で。
鑑賞
巻第十 雑歌下 640

 思いもかけずに気づかないままでいる人もいる世の中で、どのようにして衣の裏の宝の玉のことを知ったのだろうか、と詠む歌である。法華経五百弟子受記品の衣裏宝珠のたとえを踏まえ、自らに備わる仏性に気づいた人の尊さを、気づかずにいる人と対比させてたたえている。
 本巻の第六百三十四首も衣裏宝珠のたとえを詠み、山風が衣を吹き返さなければ玉を見られなかったと詠んでいる。本歌はそれに気づいた人をたたえる歌である。
 作者の「永縁」は、大蔵大輔藤原永相の子で、興福寺の僧として権僧正に至った人物である。ほととぎすの歌で名高く、初音の僧正と呼ばれた。

 初句「いかにして」は、どのようにしての意で、三句の「らむ」と呼応して疑問を表している。
 二句「衣の玉を」は、衣の裏の玉をの意で、衣裏宝珠のたとえを踏まえている。本巻の第六百三十四首の四句「衣の裏の」と通じている。
 三句「知りぬらむ」は、知ったのだろうかの意で、完了の「ぬ」に現在推量の「らむ」が付いて言い切る三句切れの歌である。
 四句「思ひもかけぬ」は、思いもかけないの意で、玉を衣に縫い「かけ」ることと縁をなしている。前歌の第六百三十九首の四句から結句「心をかけぬ」と通じている。
 結句「人もある世に」は、人もいる世の中での意で、三句以前と倒置になっている。

ころものたま:法華経に説かれる、衣の裏に縫いつけられた宝珠。人に本来備わる仏性のたとえ
作者
永縁
出典
金葉和歌集
前の歌
うき身をし渡すと聞けば海人小舟 のりに心をかけぬ日ぞなき
次の歌
いつをいつと思ひたゆみてかげろふの かげろふほどの世を過ぐすらむ