古典和歌stream

花のみや暮れぬる春の形見とて
青葉の下に散り残るらむ

歌の意味
花だけが、暮れてしまった春の形見として、青葉の下に散り残っているのだろうか。
鑑賞
巻第十一 異本歌 670

 春はすでに暮れてしまったのに、花だけがその春の形見として、青葉の陰に散り残っているのだろうか、と詠む歌である。若葉が茂るころに咲き残る花に、過ぎ去った春をしのぶ心を表している。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第一の第八十八首の次に置かれている。次の巻第一の第八十九首からは過ぎゆく春を惜しむ歌が続き、本歌は春の終わりに咲き残る花を詠んでいる。

 初句「花のみや」は、花だけがの意で、係助詞「や」が疑問を表し、結句の「らむ」で結ぶ係り結びとなっている。
 二句「暮れぬる春の」は、暮れてしまった春のの意で、完了の「ぬ」の連体形が用いられている。
 三句「形見とて」は、形見としての意である。
 四句「青葉の下に」は、青葉の陰にの意で、若葉の茂る初夏の景を示している。
 結句「散り残るらむ」は、散り残っているのだろうかの意で、現在推量の「らむ」で結んでいる。

かたみ:過ぎ去ったものを思い出すよりどころとなるもの
あをば:若葉が茂って青々とした葉
出典
金葉和歌集
前の歌
白雲と峰には見えて桜花 散れば麓の雪とこそ見れ
次の歌
卯の花を音無川の波かとて ねたくも折らで過ぎなけるかな