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卯の花を音無川の波かとて
ねたくも折らで過ぎなけるかな

歌の意味
卯の花を、音無川の波かと思って、いまいましいことに、折らずに通り過ぎてしまったことだ。
鑑賞
巻第十一 異本歌 671

 川辺に白く咲く卯の花を、音無川に立つ白波かと思い込んで、折り取らずに通り過ぎてしまったのが悔しい、と詠む歌である。卯の花の白さを波に見立て、音を立てない花を「音無」という川の名に結びつけている。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第二の第百三首の次に置かれている。巻第二の第九十八首から卯の花の歌が続き、次歌の第六百七十二首も卯の花を詠んでいる。
 なお結句は本文に「すきなけるかな」とあり、「過ぎにけるかな」と同じ意と解されるが、ここでは本文の表記に従う。

 初句「卯の花を」は、卯の花をの意で、初夏に白く咲く花である。
 二句「音無川の」は、音無川のの意で、歌枕の川の名に、音がしない意を響かせている。音を立てずに白く咲く卯の花を、その川の波と見たのである。
 三句「波かとて」は、波かと思っての意で、卯の花を白波に見立てている。
 四句「ねたくも折らで」は、いまいましいことに折らないでの意で、打消の接続助詞「で」が用いられている。
 結句「過ぎなけるかな」は、通り過ぎてしまったことだの意で、終助詞「かな」で詠嘆して結んでいる。

うのはな:初夏に白い花をつける空木の花
おとなしがは:歌枕の音無川。音がしない意を響かせる
をる:花の枝を折り取る
出典
金葉和歌集
前の歌
花のみや暮れぬる春の形見とて 青葉の下に散り残るらむ
次の歌
卯の花の青葉も見えず咲きぬれば 雪ぞ花のみかはるなりけり