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稲荷山尋ねや見まし時鳥
待つにしるしのなきと思へば

歌の意味
稲荷山を訪ねて行ってみようか。ほととぎすを待っていても、そのかいがないと思うので。
鑑賞
巻第十一 異本歌 673

 ほととぎすの初音を待っていても一向にかいがないので、いっそ稲荷山まで訪ねて行ってみようか、と詠む歌である。稲荷社の杉が「しるしの杉」と呼ばれたことを踏まえ、待つかいのなさを嘆く「しるし」と結びつけている。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第二の第百十四首の次に置かれている。第百十四首は、待ちかねて尋ねて行かなかったら、ほととぎすは誰に鳴いただろうかと詠む歌で、本歌の「尋ね」「待つ」と対応している。

 初句「稲荷山」は、山城国の稲荷山の意で、稲荷社のある山である。
 二句「尋ねや見まし」は、訪ねて行ってみようかの意で、係助詞「や」を受けてためらいの意志を表す「まし」の連体形で結ぶ係り結びとなり、二句切れの歌である。巻第二の第百十四首の初句から二句「待ちかねて尋ね」と対応している。
 三句「時鳥」は、ほととぎすの意で、初夏に初音が待たれる鳥である。
 四句「待つにしるしの」は、待っていてもかいがの意で、「しるし」に、稲荷山の「しるしの杉」を響かせている。
 結句「なきと思へば」は、ないと思うのでの意で、已然形に接続助詞「ば」が付いて理由を表す。二句以前と倒置になっている。

いなりやま:山城国の稲荷山。稲荷社があり、その杉を「しるしの杉」として尊んだ
しるし:効き目、かいの意で、稲荷山の「しるしの杉」を響かせる
出典
金葉和歌集
前の歌
卯の花の青葉も見えず咲きぬれば 雪ぞ花のみかはるなりけり
次の歌
時鳥一声鳴きて明けぬれば あやなく夜のうらめしきかな