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時鳥一声鳴きて明けぬれば
あやなく夜のうらめしきかな

歌の意味
ほととぎすがひと声鳴いただけで夜が明けてしまったので、わけもなく夜がうらめしいことだ。
鑑賞
巻第十一 異本歌 674

 ほととぎすがひと声鳴いただけで夏の短い夜が明けてしまったので、わけもなく夜がうらめしく思われる、と詠む歌である。もっと鳴き声を聞きたかったという思いを、夜の短さへの恨みとして表している。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第二の第百二十二首の次に置かれている。前後にはほととぎすの声を惜しむ歌が並び、次の巻第二の第百二十三首もほのかに鳴き渡るほととぎすを詠んでいる。

 初句「時鳥」は、ほととぎすの意である。
 二句「一声鳴きて」は、ひと声鳴いての意で、わずかしか聞けなかったことをいう。
 三句「明けぬれば」は、明けてしまったのでの意で、完了の「ぬ」の已然形に接続助詞「ば」が付いて理由を表す。
 四句「あやなく夜の」は、わけもなく夜がの意で、形容詞「あやなし」が筋の通らない思いを表している。
 結句「うらめしきかな」は、うらめしいことだの意で、終助詞「かな」で詠嘆して結んでいる。

ひとこゑ:ひと声。一度だけ鳴く声
出典
金葉和歌集
前の歌
稲荷山尋ねや見まし時鳥 待つにしるしのなきと思へば
次の歌
藤袴はやほころびてにほはなむ 秋の初風吹きたたずとも