- 歌の意味
-
これからは気を許すまい。月の光が、行方も知れぬところまで人を誘い出してしまったことだ。
- 鑑賞
-
巻第十一 異本歌 678
これからは月の光に気を許すまい、月の光は、行方も知れぬところまで人を誘い出してしまったのだから、と詠む歌である。美しい月に心ひかれてさまよい歩いたことを、月にたぶらかされたかのように言い、月の魅力の深さを表している。
本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第三の第二百六首の次に置かれている。また巻第三の第百八十九首は、月を見て思う心のままであったら、行方も知らずあこがれ出るだろうと詠んでおり、本歌と四句「行方も知らず」を共有している。
初句「今よりは」は、これからはの意である。
二句「心許さじ」は、気を許すまいの意で、打消意志の「じ」で言い切る二句切れの歌である。
三句「月影の」は、月の光がの意で、月を人を誘う者に見立てている。
四句「行方も知らず」は、行方も知れないままにの意である。巻第三の第百八十九首の四句と同じである。
結句「人誘ひけり」は、人を誘い出してしまったことだの意で、詠嘆の「けり」で結んでいる。二句と倒置になっている。
こころゆるす:気を許す、油断する
さそふ:誘い出す
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
眺むれば更けゆくままに雲晴れて 空ものどかに澄める月かな
- 次の歌
-
秋ならで妻呼ぶ鹿を聞きしかな 折から声の身にはしむかと