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我が恋は朧の清水いはでのみ
塞きやる方もなくて暮らしつ

歌の意味
私の恋は朧の清水のようで、岩の陰で人に言わずにばかりいて、せき止めた思いを流しやる方法もなく、日を暮らしたことだ。
鑑賞
巻第十一 異本歌 688

 私の恋は、岩の陰を流れる朧の清水のように、人に打ち明けずにばかりいて、せき止めた思いを流しやるすべもなく、日々を暮らしてきた、と詠む歌である。外に出せずにたまる恋の思いを、岩にせかれる清水にたとえている。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第七の第三百五十三首の次に置かれている。前後には、思いを人に知られずに抱える恋の歌が並んでいる。
 作者の「俊頼」は、大納言源経信の子で、木工頭となった源俊頼である。本集の撰者で、家集に『散木奇歌集』がある。小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「我が恋は」は、私の恋はの意である。
 二句「朧の清水」は、山城国大原にある清水の意で、歌枕である。初句の「我が恋」をたとえている。
 三句「いはでのみ」は、岩の陰でばかりの意と、言わないでばかりの意を掛けている。清水が岩にせかれることと、恋を口に出さないこととを重ねている。
 四句「塞きやる方も」は、せき止めて流しやる方法もの意で、「塞く」は清水の縁語である。
 結句「なくて暮らしつ」は、なくて日を暮らしたの意で、完了の「つ」で結んでいる。「清水」「岩」「塞く」が縁語となっている。

おぼろのしみづ:山城国大原にある清水。歌枕
いは:岩の意と、「言はで」の形で言わないでの意の「言ふ」を掛ける
せきやる:せき止めた水を流しやる
作者
源俊頼
出典
金葉和歌集
前の歌
朝日とも月ともわかず束の間も 君を忘るる時しなければ
次の歌
知らせばやほのみしま江に袖ひちて 七瀬の淀に思ふ心を