宵の間にほのかに人をみかづきの
飽かで入りにし影ぞ恋しき
- 歌の意味
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宵の間にほのかにあの人を見たが、三日月がすぐに沈むように、満ち足りないまま去ってしまったその姿が恋しい。
- 鑑賞
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巻第十一 異本歌 692
宵の間にほのかにあの人を見たが、宵のうちに沈んでしまう三日月のように、見飽きないうちに去ってしまったその姿が恋しい、と詠む歌である。わずかに見ただけで別れた人への恋しさを、すぐに沈む三日月にたとえている。
本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第七の第四百八首の次に置かれている。また巻第八の第四百八十四首も三日月に寄せる恋の歌である。
作者の「為忠」は、藤原知信の子で、丹後守などを歴任した藤原為忠である。子の寂念、寂超、寂然は、のちに大原三寂と呼ばれた。
初句「宵の間に」は、宵のうちにの意で、三日月が見える時刻を示している。
二句「ほのかに人を」は、ほのかにあの人をの意である。
三句「みかづきの」は、見ての意の「見」と、「三日月」を掛けている。巻第八の第四百八十四首の初句「三日月の」と同じ語である。
四句「飽かで入りにし」は、満ち足りないうちに沈んでしまったの意で、月が山の端に入ることと、人が去ってしまうこととを重ねている。完了の「ぬ」に過去の「き」の連体形が付いている。
結句「影ぞ恋しき」は、その姿が恋しいの意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「恋しき」で結ぶ係り結びとなっている。「影」は月の光と人の姿とを重ねている。
みかづき:見る意の「見」と、三日月を掛ける
いる:月が山の端に沈む
かげ:月の光。また人の姿
- 作者
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藤原為忠
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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白菊の変はらぬ色も頼まれず うつろはでやむ秋しなければ
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吹く風に堪へぬ梢の花よりも 留めがたきは涙なりけり