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吹く風に堪へぬ梢の花よりも
留めがたきは涙なりけり

歌の意味
吹く風に耐えられずに散る梢の花よりも、とどめにくいのは涙であったことだ。
鑑賞
巻第十一 異本歌 693

 吹く風に耐えきれずに散っていく梢の花よりも、さらにとどめにくいのは、恋の涙であった、と詠む歌である。散る花を引き合いに出し、こらえてもあふれ出る涙の激しさを表している。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第七の第四百十五首の次に置かれている。次の巻第七の第四百十六首も、葉末の露を恋の涙と重ねる歌である。

 初句「吹く風に」は、吹く風にの意である。
 二句「堪へぬ梢の」は、耐えられない梢のの意で、風に散る花の枝先をいう。
 三句「花よりも」は、花よりもの意で、格助詞「より」が比較の基準を示している。
 四句「留めがたきは」は、とどめにくいのはの意である。
 結句「涙なりけり」は、涙であったことだの意で、断定の「なり」に詠嘆の「けり」が付いて結んでいる。

とどむ:止める、とどめておく
こずゑ:木の幹や枝の先
出典
金葉和歌集
前の歌
宵の間にほのかに人をみかづきの 飽かで入りにし影ぞ恋しき
次の歌
人知れぬ恋をしすまの浦人は 泣きしほたれて過ぐすなりけり