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つれづれと思ひぞ出づる見し人を
逢はで幾月眺めしつらむ

歌の意味
しんみりと思い出すことだ。かつて逢った人に、逢わないまま幾月もの間、もの思いにふけって過ごしてきたのだろうか。
鑑賞
巻第十一 異本歌 697

 することもなく、しんみりとかつて逢った人を思い出していると、逢わないまま幾月もの間、もの思いにふけって過ごしてきたのだろうかと思われる、と詠む歌である。逢えない月日の長さを振り返り、絶えない恋しさを表している。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、前歌の第六百九十六首に続いて、本集の巻第八の第四百六十二首の次に置かれている。

 初句「つれづれと」は、することもなくしんみりとの意である。
 二句「思ひぞ出づる」は、思い出すことだの意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「出づる」で結ぶ係り結びとなっている。
 三句「見し人を」は、かつて逢った人をの意で、過去の「き」の連体形「し」が用いられている。
 四句「逢はで幾月」は、逢わないまま幾月の意で、打消の接続助詞「で」が用いられている。
 結句「眺めしつらむ」は、もの思いにふけって過ごしてきたのだろうかの意で、完了の「つ」に現在推量の「らむ」が付いて結んでいる。

ながむ:もの思いにふけりながらぼんやりと見る
みる:男女が逢う、契りを結ぶ
出典
金葉和歌集
前の歌
ものをこそ忍べば言はぬ岩代の 森にのみもる我が涙かな
次の歌
なこそといふことをば君が言種を 関の名ぞとも思ひけるかな