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あやめ草ねをのみかくる世の中に
をりたがへたる花桜かな

歌の意味
菖蒲草の根をかけるように、人々が声をあげて泣いてばかりいる世の中に、時節を取り違えて咲いた桜の花であることよ。
鑑賞
巻第十一 異本歌 705

 菖蒲草の根を軒にかける五月の世の中で、人々が声をあげて泣いてばかりいるのに、時節を取り違えて咲いた桜の花であることよ、と詠む歌である。哀傷の歌の間に置かれており、悲しみに沈む世の中で、季節外れに咲いた桜を見た感慨を詠んでいると解される。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第十の第六百六首の次に置かれている。第六百六首は、桜のために嫌っていた風が身にしみて、花より先に散ってしまいそうだと詠む哀傷の歌で、本歌も桜を詠んでいる。

 初句「あやめ草」は、菖蒲の意で、五月の節句に根を軒にかける草である。
 二句「ねをのみかくる」は、根ばかりをかけるの意の「根」と、泣く声の意の「音」を掛け、人々が声をあげて泣いてばかりいることを表している。
 三句「世の中に」は、世の中にの意である。
 四句「をりたがへたる」は、時節を取り違えたの意で、花を「折る」意を響かせている。完了の「たり」の連体形が用いられている。
 結句「花桜かな」は、桜の花であることよの意で、終助詞「かな」で詠嘆して結んでいる。巻第十の第六百六首の初句「桜ゆゑ」と同じく桜を詠んでいる。

あやめぐさ:菖蒲。五月の節句に根を軒にかけて邪気を払った
ね:菖蒲の「根」と、泣く声の「音」を掛ける
をりたがふ:時節を取り違える意で、花を「折る」を響かせる
出典
金葉和歌集
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住吉のまつかひありて今日よりは なにはのことも知らずばかりぞ
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