虫の音はこの秋しもぞなきまさる
別れの遠くなる心地して
- 歌の意味
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虫の音は、この秋はとりわけ鳴きまさり、私もいっそう泣きまさる。亡き人との別れが遠くなっていくような気がして。
- 鑑賞
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巻第十一 異本歌 706
虫の音は、この秋はとりわけ鳴きまさり、それにつれて私もいっそう泣いてしまう、亡き人との別れが日ごとに遠くなっていくような気がして、と詠む歌である。時が過ぎて別れが遠のくことへの悲しみを、虫の鳴き声と自分の泣く声とを重ねて表している。
本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第十の第六百八首の次に置かれている。第六百八首も、今年も虫の音に誘われて泣かずにはいられないと詠む哀傷の歌で、本歌と「虫の音」、虫が鳴く意と人が泣く意の掛詞を共有している。
初句「虫の音は」は、虫の鳴く声はの意である。巻第十の第六百八首の四句から結句「虫の音」と同じ語である。
二句「この秋しもぞ」は、この秋はとりわけの意で、副助詞「しも」が強めを表し、係助詞「ぞ」が三句に係る。
三句「なきまさる」は、いっそう鳴きまさるの意で、虫が「鳴く」意と、人が「泣く」意を掛けている。係助詞「ぞ」を受けて連体形で結ぶ係り結びとなり、三句切れの歌である。
四句「別れの遠く」は、別れが遠くの意で、亡き人と別れてからの時の隔たりをいう。
結句「なる心地して」は、なっていく気がしての意で、三句以前と倒置になっている。
なく:虫が鳴く意と、人が泣く意を掛ける
- 出典
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金葉和歌集
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あやめ草ねをのみかくる世の中に をりたがへたる花桜かな
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いかにせむ憂き世の中にすみがまの 果ては煙となりぬべき身を