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罪はしも露も残らず消えぬらむ
長き夜すがらくゆるおもひに

歌の意味
罪は少しも残らず消えてしまっただろう。長い夜通し、悔いて燃えくすぶる思いの火によって。
鑑賞
巻第十一 異本歌 708

 長い夜通し悔い続けた思いの火によって、罪は露ほども残らず消えてしまっただろう、と詠む歌である。懺悔によって罪が消えることを、露が消えることに重ねて表している。「悔ゆ」に「燻ゆ」、「思ひ」に「火」を掛けている。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第十の第六百三十三首の次に置かれている。第六百三十三首は、命も罪も露にたとえてきたと詠む歌で、本歌と「罪」「露」「消え」を共有している。

 初句「罪はしも」は、罪はといえばの意で、副助詞「しも」が強めを表している。巻第十の第六百三十三首の二句「罪をも露に」と同じく罪を詠んでいる。
 二句「露も残らず」は、少しも残らずの意で、「露」に、消えやすい露の意を重ねている。
 三句「消えぬらむ」は、消えてしまっただろうの意で、完了の「ぬ」に現在推量の「らむ」が付き、三句切れとなる。「露」「消え」が縁語となっている。
 四句「長き夜すがら」は、長い夜通しの意である。
 結句「くゆるおもひに」は、悔いて燃えくすぶる思いの火によっての意で、「悔ゆ」と「燻ゆ」、「思ひ」と「火」を掛けている。三句以前と倒置になっている。

くゆ:「悔ゆ」と、煙を立てて燃える「燻ゆ」を掛ける
おもひ:思いの意と、火の意を掛ける
よすがら:夜通し
出典
金葉和歌集
前の歌
いかにせむ憂き世の中にすみがまの 果ては煙となりぬべき身を
次の歌
わたつ海の底の藻屑と見しものを いかでか空の月となるらむ