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四方の海の波に漂ふ水屑をも
七重の網に引きな漏らしそ

歌の意味
四方の海の波に漂う水屑のような者をも、七重の網で引き上げて、漏らさないでほしい。
鑑賞
巻第十一 異本歌 710

 四方の海の波に漂う水屑のような取るに足りない身をも、七重の網で引き上げて、漏らさず救ってほしい、と詠む歌である。阿弥陀経に説かれる極楽浄土の七重の羅網を、衆生をすくい取る網に見立て、仏の救いにすがる心を表している。
 本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本の配列では、本集の巻第十の第六百四十二首の次に置かれている。また本巻の第七百九首も、海の底の「藻屑」を詠んでいる。
 作者の「俊頼」は、大納言源経信の子で、木工頭となった源俊頼である。本集の撰者で、家集に『散木奇歌集』がある。小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「四方の海の」は、四方の海のの意で、字余りとなっている。迷いの多い世の中を海にたとえている。
 二句「波に漂ふ」は、波に漂うの意である。
 三句「水屑をも」は、水中のくずのような者をもの意で、取るに足りない我が身をたとえている。本巻の第七百九首の二句「底の藻屑と」と通じている。
 四句「七重の網に」は、七重の網での意で、極楽浄土の七重の羅網を踏まえている。
 結句「引きな漏らしそ」は、引き上げて漏らさないでほしいの意で、「な〜そ」が禁止を表している。「海」「波」「網」「引く」が縁語となっている。

みくづ:水中のくず。取るに足りない我が身のたとえ
ななへのあみ:阿弥陀経に説かれる、極楽浄土の七重の羅網
作者
源俊頼
出典
金葉和歌集
前の歌
わたつ海の底の藻屑と見しものを いかでか空の月となるらむ
次の歌
逢ふことのなきをうきたの森に住む 呼子鳥こそ我が身なりけれ