身のほどを思ひ知りぬることのみや
つれなき人の情けなるらむ
- 歌の意味
-
自分の身のほどを思い知らされたことだけが、つれないあの人の情けなのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十一 異本歌 715
つれないあの人から受けたものといえば、自分の身のほどを思い知らされたことだけであり、それだけがあの人の情けなのだろうか、と詠む歌である。報われない恋を通して我が身のつたなさを知ったことを、皮肉を込めて相手の情けと言っている。
本歌は、本集の伝本のうち異本にのみ見える歌で、異本では、本集の巻末歌である巻第十の第六百六十五首のあとに置かれた恋の歌の一つである。
初句「身のほどを」は、自分の身のほどをの意である。
二句「思ひ知りぬる」は、思い知ったの意で、完了の「ぬ」の連体形が用いられている。
三句「ことのみや」は、ことだけがの意で、係助詞「や」が疑問を表し、結句の「らむ」で結ぶ係り結びとなっている。
四句「つれなき人の」は、つれないあの人のの意である。
結句「情けなるらむ」は、情けなのだろうかの意で、断定の「なり」に現在推量の「らむ」が付いて結んでいる。
みのほど:自分の身分や能力の程度
なさけ:思いやり、人情
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
恋ひ死なでこころづくしに今までも 頼むればこそいきの松原
- 次の歌
-
あくといふこともしらばや紅の 涙に染まる袖やかへると