増鏡 - 伏見天皇
限りない齢はまだ九十である。なお千代には遠い春であることだ。
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増鏡 - 西園寺実兼
代々の先例をなお越えて立ち上る老いの波よ。寄せてきた年月は、今日この日のためであったのだろうか。
増鏡 - 九条隆博
跡をとどめて訪ねてくださる御代の光を、亡き人は雪の内でも思い出しているのだろうか。
増鏡 - 亀山院
亡き人の重ねた罪も消えよというので、雪の中でも跡を訪ねることだ。
宮中で千代をめぐらせる初めの日だというので、今日の日の光もこのように久しく照るのだろうか。
増鏡 - 源有房
起きて別れて行く気持ちもない。道端の芝草の露より先に、私のほうが消えてしまおうか。
位山を上り果てても、峰に生える松に、なお心を残すことだ。
集めてきた窓の蛍の光によって、思っていたよりも我が身を照らすことだ。
増鏡 - 伏見院
少女が挿す小櫛、そのかみの昔を、ともに馴れ親しんだ時のことを忘れないでいる。
増鏡 - 鷹司兼忠
いっそうまた、去年の今宵が偲ばれることだ。この黄楊の小櫛を見るにつけても。
慕わしい名残に堪えきれずに月を見れば、その光はもう雲の上のものとなってしまった。
増鏡 - 後二条天皇
君はよいことに千年の齢を保っておられるのだから、また会うことの数も知れないほど多いはずである。
増鏡 - 遊義門院
物思いにばかり沈んで寝覚めたその折に、つくづくと見るのも悲しい灯し火の色よ。
春に着た薄い喪の衣を乾かす間もなく、心も暗くなる秋霧の空であることよ。
増鏡 - 帥宮
明日から降る時雨を待たずに染まってしまった。袖の涙が染めたのだろうか、この蔦の紅葉は。
増鏡 - 昭訓門院
四方はみな涙の色に染まってしまった。空には濡れていない秋の紅葉であることよ。