増鏡 - 後嵯峨院
梅の枝に、代々の昔の春をかけて、変わらずやって来てとまる鴬の声よ。
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よそに比べて、時雨もどうして染めずにいられようか。我が手で植えて見ているこの山の紅葉なのだから。
増鏡 - 宗尊親王
虎のようにばかり扱われていたのは昔のことで、今は鼠が穴にひそむような身だ。ああつらい世の中よ。
それでもなお頼みに思う、北野の神を。雪の降り積もった朝ぼらけに、跡もないことに埋もれてしまっているこの身は。
私だけが姿を変えることになるのだろうか。飛鳥川の同じ淵瀬に月は澄んで宿るとしても。
以前から袖も時雨に濡れて、墨染めの夕暮れに色を増してゆく峰の紅葉であることよ。
増鏡
袖を濡らす今日という日を、いつのことかと思っていたのに。時雨れてつらい神無月であることよ。
増鏡 - 源具氏
梅の花よ。春が春でもないこの世を、いつが時節と知って咲き匂うのだろうか。
増鏡 - 洞院公雄
心があるならば、この頃も憂き世の梅の花は、折をわきまえてさえいれば匂わずにいるだろうに。
増鏡 - 洞院実雄
はかないことに、実る当てもないままに、君の御代となったならばと、我が身をも頼みに思ってきたことだ。
増鏡 - 後深草院
夢とさえはっきりしないほど束の間であった仮寝の、その草の枕に涙の露がこぼれることだ。
増鏡 - 鷹司兼平
伏見山よ、幾万代も枝を添えて栄えてゆく松の末は久しいことだ。
栄えるはずの年月こそ久しい。伏見山に生い添う松の枝を連ねて。
増鏡 - 藤原為氏
勅を下して祈ったしるしの神風に、寄せて来る波はたちまち砕けてしまったことだ。
増鏡 - 後宇多天皇
行く末をなお長い世と契ることだ。三月に移る今日の春の日に。
増鏡 - 亀山院
百の声色で今や鳴くのだろうか。鴬もまた、九十を数える君の春を経て。