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白露に風の吹きしく秋の野は
貫き留めぬ玉ぞ散りける

歌の意味
白露に風がしきりに吹きつける秋の野は、糸で貫きとめていない玉が散り乱れていることだ。
鑑賞
巻第六 秋歌中 308

詞書は前の歌に続き「延喜御時、歌召しければ」
 白露に風がしきりに吹きつける秋の野では、糸に通しとめていない玉が散り乱れているようだと詠んだ歌である。風に吹かれて飛び散る露を、糸の切れた玉に見立て、秋の野の動きのある美しさを捉えている。
 本巻の第三百六首から第三百九首までは、詞書「延喜御時、歌召しければ」のもとに白露の歌が四首並んでいる。小倉百人一首に採られた歌として名高い。
 作者の文屋朝康は文屋康秀の子で、大舎人大允などを務めた。

 初句「白露に」は、白露に、の意である。
 二句「風の吹きしく」の「吹きしく」は、しきりに吹く、の意である。巻第五の第二百六十一首、第二百六十四首も「吹きしく」を用いている。
 三句「秋の野は」は、秋の野は、の意で、前歌の初句「秋の野の」を受けている。
 四句「貫き留めぬ」は、糸で貫いてとめていない、の意で、前歌の「玉と貫くらん」を受け、糸に通されていない玉と見立てている。
 結句「玉ぞ散りける」は、玉が散り乱れていることだ、の意で、係助詞「ぞ」と連体形「ける」が係り結びをなす。

ふきしく:しきりに吹く、吹き続ける
つらぬく:糸などを通してつなぐ
作者
文屋朝康
出典
後撰和歌集
前の歌
秋の野の草は糸とも見えなくに 置く白露を玉と貫くらん
次の歌
秋の野に置く白露を今朝見れば 玉や敷けると驚かれつつ