まどろまぬ壁にも人を見つるかな
まさしからなん春の夜の夢
- 歌の意味
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うとうと眠りもしないのに、壁越しにもあの人を見たことだ。春の夜の夢よ、正夢であってほしい。
- 鑑賞
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巻第九 恋歌一 509
詞書「源のおほきが通ひ侍りけるを、のちのちはまからずなり侍りにければ、隣の壁の穴よりおほきをはつかに見てつかはしける」
眠ってもいないのに壁越しにあの人を見た、この春の夜の夢が正夢であってほしいと詠んだ歌である。訪れの絶えた恋人を壁の穴からかいま見たことを夢になぞらえ、再び逢えることを願っている。
詞書によれば、通ってきていた源のおほきが、のちには来なくなったので、隣の家の壁の穴からおほきをわずかに見て送った歌である。現実にかいま見た姿を、夢で見たかのように詠んでいる。
作者の「するが」は駿河という呼び名の女性で、女房名と考えられる。経歴は詳しく伝わらない。
初句「まどろまぬ」は、うとうとと眠りもしない、の意で、夢を見るはずのない目覚めた状態をいっている。
二句「壁にも人を」は、壁越しにもあの人を、の意で、詞書の壁の穴からかいま見たことをいう。
三句「見つるかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、見たことだ、の意である。ここで句切れとなる。
四句「まさしからなん」の「なん」は他に対する願望を表す終助詞で、正夢であってほしい、の意である。
結句「春の夜の夢」は、短くはかない春の夜の夢、の意で、体言止めで一首を結び、四句と倒置の関係にある。
まどろむ:うとうとと眠る
- 作者
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駿河
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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暁と何か言ひけん別るれば 宵もいとこそわびしかりけれ
- 次の歌
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くやくやと待つ夕暮れと今はとて 帰る朝といづれまされり