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信濃なる浅間の山も燃ゆなれば
富士の煙のかひやなからん

歌の意味
信濃にある浅間山も燃えているというのだから、富士の煙を贈っても、甲斐もないのだろうか。
鑑賞
巻第十九 離別歌 1308

詞書「信濃へまかりける人に、薫物つかはすとて」
 信濃の浅間山も燃えているそうなので、富士の煙は甲斐がないだろうか、と詠んだ歌である。信濃へ下る人に薫物を贈るにあたり、煙を上げる浅間山のある地へ行く人に、富士の煙にたとえた薫物を贈っても張り合いがないかと、謙遜を込めて興じている。
 詞書によれば、信濃へ下る人に薫物を贈るときに添えた歌である。駿河の国の富士山と信濃の国の浅間山の間に甲斐の国があることを踏まえ、作者の名「駿河」にちなんで富士を詠み込んでいる。
 作者の駿河は、平安時代中期の女房とみられるが、詳しい伝は未詳である。

 初句「信濃なる」は、信濃にある、の意で、旅立つ人の行く先である。
 二句「浅間の山も」は、浅間山も、の意で、浅間山は噴煙を上げる山として詠まれる。
 三句「燃ゆなれば」は、燃えているというのだから、の意で、「なれ」は伝聞を表す。
 四句「富士の煙の」は、富士山の煙の、の意で、贈る薫物の煙を富士の煙にたとえている。富士は駿河の国の山で、作者の名にちなむ。
 結句「かひやなからん」の「かひ」は、効き目の「甲斐」と、国名の「甲斐」を掛けた掛詞で、甲斐もないだろうか、の意である。「や」は疑問の係助詞で、連体形「なからん」で結ぶ係り結びとなっている。

たきもの:香を練り合わせた薫物
かひ:効き目の「甲斐」の意と、国名の「甲斐」を掛ける
作者
駿河
出典
後撰和歌集
前の歌
ふたみ山ともに越えねどます鏡 底なる影をたぐへてぞやる
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このたびも我を忘れぬものならば うち見むたびに思ひ出でなん