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くやくやと待つ夕暮れと今はとて
帰る朝といづれまされり

歌の意味
まだかまだかと待つ夕暮れと、もうこれまでと帰っていく朝と、どちらがまさってつらいだろうか。
鑑賞
巻第九 恋歌一 510

詞書「相知りて侍りける人のもとに、返事見むとてつかはしける」
 まだかまだかと相手を待つ夕暮れと、別れて帰っていく朝と、どちらがつらいかを問いかけた歌である。逢う前の待つ苦しさと、逢ったあとの別れの苦しさを比べてみせ、相手の思いを引き出そうとしている。
 詞書によれば、契りを交わした相手の返事を見ようとして送った歌である。次歌はその返歌で、二首は贈答の一組となっている。
 作者の「元良のみこ」は元良親王である。陽成天皇の皇子で、色好みの風流人として知られた。家集に『元良親王集』があり、小倉百人一首には「わびぬれば今はた同じ難波なる」の歌が採られている。

 初句「くやくやと」は、まだかまだかと、の意で、待ちわびる気持ちを表している。
 二句「待つ夕暮れと」は、相手の訪れを待つ夕暮れと、の意である。次歌の初句と二句「夕暮れはまつにもかかる」がこれを受けている。
 三句「今はとて」は、もうこれまでと、の意で、別れの際の言葉である。
 四句「帰る朝と」は、帰っていく翌朝と、の意で、二句の「夕暮れ」と対をなしている。次歌の四句「おくる朝」がこれを受けている。
 結句「いづれまされり」は、どちらがまさっているか、の意で、二つのつらさを比べる問いかけとなっている。

あした:夜が明けた朝、男が女のもとから帰る翌朝
作者
元良親王
出典
後撰和歌集
前の歌
まどろまぬ壁にも人を見つるかな まさしからなん春の夜の夢
次の歌
夕暮れはまつにもかかる白露の おくる朝や消えは果つらん