暁と何か言ひけん別るれば
宵もいとこそわびしかりけれ
- 歌の意味
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別れのつらいのは暁だと、どうして言ったのだろうか。別れてしまえば、宵のうちでもひどくつらいものであったよ。
- 鑑賞
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巻第九 恋歌一 508
詞書「忍びたりける人にもの語らひ侍りけるを、人の騒がしく侍りければ、まかり帰りてつかはしける」
別れのつらいのは暁だとどうして言ったのだろう、別れてしまえば宵でもひどくつらいと詠んだ歌である。後朝の別れを暁のものとする通念をくつがえし、宵のうちに引き裂かれた別れのつらさを訴えている。
詞書によれば、ひそかに通う相手と語らっていたところ、人の気配が騒がしくなったので、帰ってから送った歌である。前歌と同じく結句を「わびしかり」で結び、思うように逢えないつらさを重ねている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の一人で、土佐守などを務めた。『土佐日記』の作者としても知られ、三十六歌仙の一人である。
初句「暁と」は、夜明け前のまだ暗いころと、の意で、恋人が別れる時刻をいう。
二句「何か言ひけん」の「か」は疑問の係助詞で、連体形「けん」と係り結びをなし、どうして言ったのだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
三句「別るれば」は、別れてしまうと、の意で、「ば」は確定条件を表す。
四句「宵もいとこそ」は、宵のうちでもひどく、の意で、「こそ」は強めの係助詞である。初句の「暁」と四句の「宵」が対になっている。
結句「わびしかりけれ」は、つらいことであったよ、の意で、四句の「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びとなっている。前歌の結句「わびしかりける」と響き合っている。
あかつき:夜明け前のまだ暗いころ、恋人が別れる時刻
よひ:日が暮れて間もないころ
- 作者
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紀貫之
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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東路の佐夜の中山なかなかに 逢ひ見てのちぞわびしかりける
- 次の歌
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まどろまぬ壁にも人を見つるかな まさしからなん春の夜の夢