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雨によりたみのの島を分け行けど
なにはかくれぬものにぞありける

歌の意味
雨が降るので、蓑という名をもつ田蓑の島を分け進んで行くけれども、蓑に身を隠せても、名には隠れられないものであったのだ。ここは難波なのだから。
鑑賞
巻第六 別歌 343

詞書「田蓑の島のほとりにて雨に遭ひて」
 雨に遭って蓑の名をもつ田蓑の島を進んでいくが、蓑で身は隠せても名には隠れられないと、難波の地名に掛けて戯れる歌である。「田蓑」と「難波」の二つの地名を雨と蓑の縁で結び、旅の途中の雨を機知に転じている。詞書によれば、田蓑の島のあたりで雨に遭った時の歌である。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。

 初句「雨により」は、雨が降るので、の意である。
 二句「たみのの島を」は、摂津国の難波にあった田蓑の島と、雨具の「蓑」とを掛けている。
 三句「分け行けど」は、分け進んで行くけれども、の意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
 四句「なにはかくれぬ」は、「名には隠れぬ」と、地名の「難波」とを掛けている。前歌の第三百四十二首の浜名に続き、地名の「名」をめぐる機知の歌である。
 結句「ものにぞありける」は、ものであったのだ、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ。

たみの:摂津国の田蓑の島と、雨具の蓑とを掛ける
なには:摂津国の難波と、名にはの意とを掛ける
作者
紀貫之
出典
拾遺和歌集
前の歌
潮満てるほどに行き交ふ旅人や はまなの橋と名付けそめけん
次の歌
郭公ねぐらながらの声聞けば 草の枕ぞ露けかりける