試みになほ下り立たむ涙川
うれしき瀬にも流れあふやと
- 歌の意味
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試しに、やはり下り立ってみよう、この涙川に。流れ流れて、うれしい瀬にもめぐり会うかと思って。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 612
詞書「又」
試しにやはり涙川に下り立ってみよう、流れていけばうれしい瀬にもめぐり会うかもしれない、と詠んだ歌である。前歌でかわされたのにひるまず、いつか逢える日を期待して恋に身を投じる心を表している。
前歌の第六百十一首の返しを受けて、再び作者が詠み送った歌で、第六百十首から続く涙川の贈答の三首目である。
作者の「とし中」は橘敏仲である。平安時代中期の人物で、経歴は詳しく伝わらない。
初句「試みに」は、試しに、の意である。
二句「なほ下り立たむ」は、それでもやはり下り立とう、の意で、「む」は意志を表す。前歌の四句「下りや立つべき」に答えている。
三句「涙川」は、流れる涙を川にたとえた語で、贈答の三首に共通する語である。ここで句切れとなる。
四句「うれしき瀬にも」は、うれしい瀬にも、の意で、「瀬」には逢う機会の意を響かせている。
結句「流れあふやと」は、流れていってめぐり会うかと思って、の意で、三句までと倒置の関係にある。
せ:川の浅い所、ここでは逢う機会の意を響かせる
- 作者
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橘敏仲
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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淵瀬とも心も知らず涙川 下りや立つべき袖の濡るるに
- 次の歌
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かかりける人の心をしらつゆの 置ける物とも頼みけるかな