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おほかたはなぞや我が名の惜しからん
昔のつまと人に語らむ

歌の意味
もはやどうして私の評判を惜しむことがあろうか。あなたを昔からの妻だと人に語ろう。
鑑賞
巻第十 恋歌二 633

詞書「おほつぶねに物のたうびつかはしけるを、さらに聞き入れざりければつかはしける」
 もはやどうして我が評判を惜しもうか、あなたを昔からの妻だと人に語ろう、と詠んだ歌である。言い寄っても聞き入れないおほつぶねに、うわさになるのもかまわないと、強引に迫っている。
 詞書によれば、おほつぶねに言葉をかけて送ったが、まったく聞き入れなかったので詠んだ歌である。次歌の第六百三十四首はおほつぶねの返しである。
 作者の「貞元のみこ」は貞元親王である。清和天皇の皇子である。

 初句「おほかたは」は、総じて、もはや、の意である。
 二句「なぞや我が名の」は、どうして私の評判が、の意で、「や」は反語の係助詞である。
 三句「惜しからん」は、惜しいことがあろうか、の意で、二句の「や」を受けて連体形「ん」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。次歌の第六百三十四首は「なき名の惜しければ」と、この句を受けて切り返している。
 四句「昔のつまと」は、昔からの妻だと、の意である。次歌の四句「昔も今も」がこれに応じている。
 結句「人に語らむ」は、人に語ろう、の意で、「む」は意志を表す。

のたうぶ:「言ふ」の尊敬語、おっしゃる
作者
貞元親王
出典
後撰和歌集
前の歌
あしひきのやまひはすともふみ通ふ あとをも見ぬは苦しきものを
次の歌
人はいさ我はなき名の惜しければ 昔も今も知らずとを言はん