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あしひきのやまひはすともふみ通ふ
あとをも見ぬは苦しきものを

歌の意味
病気になっているとしても、手紙を通わせるその筆跡さえ見られないのは、苦しいことなのに。
鑑賞
巻第十 恋歌二 632

詞書「物のたうびける女のもとに文つかはしたりけるに、心地あしとて返事もせざりければ、又つかはしける」
 病気になっているとしても、通わせる手紙の筆跡さえ見られないのは苦しい、と詠んだ歌である。具合が悪いと返事をよこさない女に、ひと筆だけでも返事がほしいと訴えている。
 詞書によれば、言葉を交わしていた女に手紙を送ったところ、気分が悪いといって返事もしなかったので、再び送った歌である。
 作者の大江朝綱は、大江音人の孫で、参議を務めた。漢詩文と書にすぐれた学者として知られる。

 初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞で、二句の「やまひ」の「やま」を導いている。
 二句「やまひはすとも」の「やまひ」は、「山」と「病」を掛けた掛詞で、病気になっているとしても、の意である。
 三句「ふみ通ふ」の「ふみ」は、「文」と、山を「踏み」の意を掛けた掛詞で、山の縁語となっている。
 四句「あとをも見ぬは」の「あと」は、手紙の筆跡と、山を踏み通った足跡を掛けた掛詞で、筆跡さえ見られないのは、の意である。
 結句「苦しきものを」は、苦しいことなのに、の意で、「ものを」は逆接の気持ちを込めた詠嘆を表す。

やまひ:「山」と「病」を掛ける
ふみ:「文」の意と、「踏み」を掛ける
あと:筆跡の意と、足跡を掛ける
のたうぶ:「言ふ」の尊敬語、おっしゃる
作者
大江朝綱
出典
後撰和歌集
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色ならば移るばかりも染めてまし 思ふ心をえやは見せける
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