古典和歌stream

色ならば移るばかりも染めてまし
思ふ心をえやは見せける

歌の意味
思いが色であるなら、あなたに移り染まるほどに染めてみせもしようが、思う心をどうして見せることなどできようか。
鑑賞
巻第十 恋歌二 631

詞書「言ひ交はしける女のもとより、なほざりに言ふにこそあんめれと言へりければ」
 思いが色ならばあなたに移るほど染めてみせるが、思う心を見せることなどできようか、と詠んだ歌である。いいかげんな気持ちで言っているのだろうと疑う女に、目に見えない心のもどかしさを訴えている。
 詞書によれば、言葉を交わしていた女から、いいかげんに言っているのでしょうと言ってきたので詠んだ歌である。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の一人で、土佐守などを務めた。『土佐日記』の作者としても知られ、三十六歌仙の一人である。

 初句「色ならば」は、思いが色であるなら、の意である。
 二句「移るばかりも」は、あなたに移り染まるほどにも、の意である。
 三句「染めてまし」は、染めてみせもしよう、の意で、「まし」は事実に反することを仮に想像する反実仮想の助動詞である。ここで句切れとなる。
 四句「思ふ心を」は、あなたを思う心を、の意である。
 結句「えやは見せける」は、どうして見せることができようか、の意で、「やは」は反語の係助詞、連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。

うつる:色が他のものに移り染まる
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
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