逢ふことのかたのへとてぞ我はゆく
身を同じ名に思ひなしつつ
- 歌の意味
-
逢うことの難しい、その「かた」の名を持つ交野へと思って私は行くのだ。逢うことの難しい我が身を、交野と同じ名のものと思いなしながら。
- 鑑賞
-
巻第十三 恋歌五 917
詞書「得難う侍りける女の家の前よりまかりけるを見て、いづこへ行くぞと言ひ出だして侍りければ」
逢うことの難しい「かた」の名を持つ交野へ行くのだ、我が身を同じ名と思いなして、と詠んだ歌である。地名の交野に「逢ふことの難(かた)」を掛け、なかなか逢ってくれない女への恨みを機知に包んで答えている。
詞書によれば、なかなか思いのかなわない女の家の前を通って行くのを女が見て、どこへ行くのかと声をかけてきたので答えた歌である。行き先を問われて地名にこと寄せ、逢えない恨みをさりげなく伝えている。
作者の「藤原ためよ」は藤原為世とされるが、詳しい伝は未詳である。
初句「逢ふことの」は、逢うことの、の意で、二句の「かた」にかかっている。
二句「かたのへとてぞ」は、交野へと思って、の意で、「かた」に逢うことの「難(かた)」と地名の「交野」を掛けている。「ぞ」は強めの係助詞である。
三句「我はゆく」は、私は行くのだ、の意で、二句の「ぞ」を受けて連体形で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなり、以下と倒置になっている。
四句「身を同じ名に」は、我が身を交野と同じ名に、の意で、逢うことの難しい身であることをいう。
結句「思ひなしつつ」は、思いなしながら、の意で、「つつ」は動作の継続を表す接続助詞である。
かたの:地名の「交野」に、逢うことの「難(かた)」を掛ける
おもひなす:そうだと思い込む、みなす
- 作者
-
藤原為世
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
伊勢の海の海人のまてかたいとまなみ 長らへにける身をぞうらむる
- 次の歌
-
君があたり雲居に見つつ宮道山 うち越えゆかむ道も知らなく