古典和歌stream

思ふてふ言の葉いかになつかしな
後憂きものと思はずもがな

歌の意味
「思っている」という言葉は、なんと心ひかれるものだろう。後になってつらいものになるなどと思わずにいられたらよいのに。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 919

詞書「男の返事につかはしける」
 「思っている」という言葉はなんと心ひかれることか、後でつらいものになるとは思わずにいたい、と詠んだ歌である。男の愛の言葉に心ひかれながらも、いつか裏切られるのではないかという不安を拭えない女心を詠んでいる。
 詞書によれば、男からの手紙への返事として送った歌である。次歌の第九百二十首も初句を「思ふてふ」とし、同じ言葉を一方は心ひかれるものとして、一方はつらいものとして詠む、対をなす二首となっている。
 作者の俊子は、後撰集の時代の女性歌人で、詳しい伝は未詳である。

 初句「思ふてふ」は、思っているという、の意で、「てふ」は「といふ」のつまった形である。次歌と同じ初句である。
 二句「言の葉いかに」は、その言葉はなんと、の意である。
 三句「なつかしな」は、心ひかれることだ、の意で、「な」は詠嘆の終助詞である。ここで句切れとなる。
 四句「後憂きものと」は、後になってつらいものと、の意である。
 結句「思はずもがな」は、思わずにいたいものだ、の意で、「もがな」は願望を表す終助詞である。

ことのは:言葉
作者
俊子
出典
後撰和歌集
前の歌
君があたり雲居に見つつ宮道山 うち越えゆかむ道も知らなく
次の歌
思ふてふことこそ憂けれくれ竹の よにふる人の言はぬなければ