風霜に色も心も変はらねば
主に似たる植ゑ木なりけり
- 歌の意味
-
風や霜にあっても、色も心も変わらないので、この棕櫚は主に似た植木であることだ。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑歌三 1229
詞書「前栽の中に棕櫚の木生ひて侍ると聞きて、行明の皇子のもとより一木乞ひにつかはしたれば、加へてつかはしける」
風や霜にあっても色も心も変わらないので、主に似た植木であることだ、と詠んだ歌である。常緑の棕櫚を、風霜にも変わらない主の心にたとえ、所望された木に添えて送っている。
詞書によれば、作者の庭の植え込みに棕櫚の木が生えていると聞いて、行明親王のもとから一本ほしいと言ってきたので、木に添えて送った歌である。次歌は行明親王の返しで、二首は贈答の一組となっている。
作者の真延法師は、平安時代中期の僧で、詳しい伝は未詳である。
初句「風霜に」は、風や霜にあっても、の意で、厳しい風霜にさらされることをいう。
二句「色も心も」は、色も心も、の意で、木の色と主の心とを並べている。
三句「変はらねば」は、変わらないので、の意で、「ば」は原因、理由を表す。
四句「主に似たる」は、主に似ている、の意で、変わらぬ心を持つ主とこの木を重ねている。次歌の二句も同じ「主に似たる」を用いて応じている。
結句「植ゑ木なりけり」は、植木であることだ、の意で、「なりけり」は気づきを表す。
せんざい:庭の植え込み
すろ:棕櫚、常緑の高木
あるじ:主人
- 作者
-
真延法師
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
いづこにも身をば離れぬ影しあれば 臥す床ごとに一人やは寝る
- 次の歌
-
山深み主に似たる植ゑ木をば 見えぬ色とぞ言ふべかりける