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行く先を知らぬ涙の悲しきは
ただ目の前に落つるなりけり

歌の意味
行く末もわからないまま流す別れの涙が悲しいのは、それがただ目の前にこぼれ落ちてしまうからであった。
鑑賞
巻第十九 離別歌 1333

詞書「出羽より上りけるに、これかれ馬のはなむけしけるに、土器取りて」
 行く先を知らない涙が悲しいのは、ただ目の前に落ちるからであった、と詠んだ歌である。別れの宴で、行く末の知れない旅を思って流す涙が、ただ目の前にこぼれ落ちるばかりであることを悲しんでいる。
 詞書によれば、出羽から都へ上る時に、人々が送別の宴を催したので、杯を取って詠んだ歌である。
 作者の「源のわたる」は源済とみられるが、詳しい伝は未詳である。

 初句「行く先を」は、行く末を、の意である。
 二句「知らぬ涙の」は、知らずに流す涙の、の意である。
 三句「悲しきは」は、悲しいのは、の意である。
 四句「ただ目の前に」は、ただ目の前に、の意で、行く先のはるかさと目の前とを対比している。
 結句「落つるなりけり」は、落ちるからであったのだ、の意で、「なりけり」は気づきを表す。

うまのはなむけ:旅立つ人を送る餞別の宴
かはらけ:素焼きの杯
作者
源済
出典
後撰和歌集
前の歌
年を経てあひ見る人の別れには 惜しきものこそ命なりけれ
次の歌
忘るなと言ふに流るる涙川 憂き名をすすぐ瀬ともならなん