古典和歌stream

紅葉葉を手ごとに折りて帰りなん
風の心もうしろめたきに

歌の意味
紅葉の枝を、めいめい手に手に折って帰ろう。紅葉を散らす風の心も気がかりなので。
鑑賞
巻第三 秋歌 200

詞書「天暦御時、殿上の男ども紅葉見に大井にまかりけるに」
 風が紅葉を散らしてしまうのではないかと気がかりなので、めいめいが紅葉の枝を手折って持ち帰ろうと詠む歌である。紅葉を惜しむ心を、風への警戒という形で表している。詞書によれば、村上天皇の天暦の御代に、殿上人たちが大井川へ紅葉を見に出かけたときの歌である。
 作者の「源延光朝臣」は、醍醐天皇の皇子である代明親王の子で、権大納言に至った。

 初句「紅葉葉を」は、本巻の第百九十五首と同じ初句で、大井川の紅葉をいう。次歌の第二百一首も同じ折の歌で、紅葉を折るか折らないかをめぐって二首が対をなす。
 二句「手ごとに折りて」は、めいめいが手に手に折って、の意である。
 三句「帰りなん」は、帰ろう、の意で、「な」は強意、「ん」は意志の助動詞である。ここで句切れとなり、下の句とは倒置の関係になる。
 四句「風の心も」は、紅葉を散らす風の心も、の意で、風を擬人化している。
 結句「うしろめたきに」は、気がかりなので、の意である。倒置によって、折って帰る理由を後から示している。

てんじやう:清涼殿の殿上の間。また昇殿を許された人。殿上
作者
源延光
出典
拾遺和歌集
前の歌
昨日より今日はまされる紅葉葉の 明日の色をば見でや止みなん
次の歌
枝ながら見てを帰らん紅葉葉は 折らんほどにも散りもこそすれ