- 歌の意味
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旅人が道の露を払うはずのこの唐衣は、まだ旅立つ前から、もう袖が涙で濡れてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 326
詞書「源弘景ものへまかりけるに、装束給ふとて」
旅人が道中の露を払うための衣なのに、まだ旅立つ前から、贈る自分の涙で袖が濡れてしまったと詠む歌である。旅の露を払う衣と、見送る側の涙に濡れる袖とを対比させ、別れを惜しむ心を表している。詞書によれば、源弘景が旅に出る時、装束を与えるにあたって詠んだ歌である。
作者の「三条太皇太后宮」は昌子内親王である。朱雀天皇の皇女で、冷泉天皇の皇后となり、のちに太皇太后となった。三条に住んだことからこの名で呼ばれる。
初句「旅人の」は、旅をする人の、の意である。
二句「露払ふべき」は、道の草葉の露を払うはずの、の意である。
三句「唐衣」は、美しい衣をいい、贈る装束を指している。本巻の第三百二十一首、次歌の第三百二十七首とともに、唐衣を贈る別れの歌である。
四句「まだきも袖の」は、まだその時にならないうちから袖が、の意である。
結句「濡れにけるかな」は、濡れてしまったことだ、の意で、「に」は完了、「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形、「かな」は詠嘆である。本巻の第三百二十九首では、見送る側が濡れた袖を旅人に干して行けと詠んでおり、袖の涙をめぐって呼応している。
まだき:まだその時にならないうち
からころも:美しい衣。衣の美称
さうぞく:衣服。装束
- 作者
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昌子内親王
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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別るるををしとぞ思ふ剣羽の 身をより砕く心地のみして
- 次の歌
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あまたには縫ひ重ねねど唐衣 思ふ心は千重にぞありける