あしひきの山越え暮れて宿借らば
妹立ち待ちて寝ねざらむかも
- 歌の意味
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山を越えるうちに日が暮れて、旅先で宿を借りることになったら、妻は立って私の帰りを待ち、寝ないでいるだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 781
詞書「旅の思ひを述ぶといふことを」
山を越えるうちに日が暮れ、旅の宿を借りることになれば、家の妻は立ち尽くして帰りを待ち、眠らずにいるだろうかと思いやる歌である。詞書から、旅の思いを述べるという題で詠まれたことがわかり、旅の身から家で待つ妻を案じる心を詠んでいる。
作者の「石上乙麿」は石上乙麻呂である。奈良時代の公卿で、左大臣石上麻呂の子である。中納言に至り、漢詩集の懐風藻にも詩が収められている。
初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。「あしひきの」で始まる一連の五首目である。
二句「山越え暮れて」は、山を越えるうちに日が暮れて、の意である。
三句「宿借らば」は、宿を借りるならば、の意で、「ば」は未然形について仮定を表す。
四句「妹立ち待ちて」は、妻が立ったまま待って、の意である。「妹」は男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語である。旅の夫を待つ妻の姿を、前の第七百八十首までの待つ側の歌とは視点を反転させ、旅する側から思いやっている。
結句「寝ねざらむかも」は、寝ないでいるだろうか、の意で、「かも」は疑問を含む詠嘆を表す。
いも:男性から妻や恋人を親しんで呼ぶ語
ぬ:寝。眠る
- 作者
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石上乙麻呂
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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あしひきの山の山菅やまずのみ 見ねば恋しき君にもあるかな
- 次の歌
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あしひきの山より出づる月待つと 人には言ひて君をこそ待て