あしひきの山より出づる月待つと
人には言ひて君をこそ待て
- 歌の意味
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山から出る月を待っているのだと人には言って、実はあなたをこそ待っているのだ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 782
詞書「題しらず」
山から昇る月を待っていると人には言いながら、実はあなたを待っているのだと詠む歌である。恋を人に知られまいと月待ちを口実にしつつ、恋人の訪れを待つ心をひそかに打ち明けている。
作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
万葉集巻十二に類歌が収められている。
初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。「あしひきの」で始まる一連の六首目で、一連の結びの歌である。
二句「山より出づる」は、山から出る、の意である。
三句「月待つと」は、月を待っていると、の意である。次歌の第七百八十三首から月を詠む歌が続き、ここで「あしひきの」の一連から月の歌へと橋渡しをしている。
四句「人には言ひて」は、人には言って、の意で、恋を人に知られまいとする心を表す。
結句「君をこそ待て」は、あなたをこそ待っている、の意で、係助詞「こそ」を受けて「待て」と已然形で結んでいる。第七百七十九首の結句「君をこそ思へ」と同じ言い回しで、一連の中で思う心と待つ心が対をなしている。
いづ:出づ。出る
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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あしひきの山越え暮れて宿借らば 妹立ち待ちて寝ねざらむかも
- 次の歌
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三日月のさやかに見えず雲隠れ 見まくぞほしきうたてこのころ