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限りなくとくとはすれどあしひきの
山ゐの水は猶ぞ凍れる

歌の意味
この上なく急いで、氷を解かして早く摺ろうとはしているのだが、山の井の水はまだ凍っていて、山藍の摺り染めはまだできないでいる。
鑑賞
巻第十七 雑秋歌 1147

詞書「祭の使にまかり出でける人のもとより、摺り袴摺りに遣はしけるを」
 この上なく急いで、氷を解かして早く仕上げようとはしているが、山の井の水がまだ凍っていて摺り染めができないと詠む歌である。詞書から、祭の使として出向く人のもとから、摺り袴を摺ってほしいと頼んできたのに対して詠んだ歌とわかる。「とく」に「疾く」と「解く」を、「山ゐ」に「山の井」と摺り染めに用いる「山藍」を掛け、仕上がりの遅れを、水の凍る季節にことよせて言いわけしている。
 作者は、本文では詞書の末尾に「東宮女蔵人左近」と記されており、東宮に仕えた女蔵人で、左近と呼ばれた女性である。詳しい伝は明らかでない。

 初句「限りなく」は、この上なく、の意である。
 二句「とくとはすれど」は、「とく」が早くの意の「疾く」と、氷を「解く」を掛ける掛詞で、急いで解かそうとはしているけれども、の意となる。
 三句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。本巻の第千百四十九首の初句「あしひきの」と同じ語で、二首とも「あしひきの山ゐ」と続けている。
 四句「山ゐの水は」は、「山ゐ」が山の泉の「山の井」と、摺り染めに用いる「山藍」を掛ける掛詞である。本巻の第千百四十九首の二句「山ゐに摺れる」と同じ語を共有している。
 結句「猶ぞ凍れる」は、まだ凍っている、の意で、係助詞「ぞ」を受けて、存続の助動詞「り」の連体形「る」で結ぶ係り結びである。二句の「解く」と、解けると凍るとで対をなしている。

すりばかま:摺り袴。山藍などで模様を摺り染めにした袴
とく:早くの意の「疾く」と、氷を「解く」意を掛ける
やまゐ:山の泉の「山の井」と、摺り染めに用いる「山藍」を掛ける
作者
左近
出典
拾遺和歌集
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