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有明の心地こそすれさかづきに
日かげも添ひて出でぬと思へば

歌の意味
有明の月を見ているような心地がすることだ。月を含む杯に、日かげまで添えて差し出されたと思うと。
鑑賞
巻第十七 雑秋歌 1148

詞書「小忌にあたりたる人のもとにまかりたりければ、女ども、杯に日陰を添へて出したりければ」
 杯に日陰の蔓を添えて差し出されたのを、月に日の光が添って現れたと見て、有明の心地がすると詠む歌である。詞書から、小忌の役に当たった人のもとを訪れたところ、女房たちが杯に日陰の蔓を添えて差し出したので詠んだ歌とわかる。「さかづき」に「月」を含ませ、神事に用いる「日陰」に日の光の「日影」を掛けて、月の残る空に日がのぼる有明の景に見立てている。
 作者の「よしのふ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務めた神官の家の人で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進にあたった。三十六歌仙に数えられる。

 初句「有明の」は、月が空に残ったまま夜が明ける頃の、の意である。
 二句「心地こそすれ」は、心地がすることだ、の意で、係助詞「こそ」を受けて已然形「すれ」で結ぶ係り結びである。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
 三句「さかづきに」は、杯に、の意で、「さかづき」の中に「月」を含ませている。
 四句「日かげも添ひて」は、「日かげ」が日の光の「日影」と、神事で冠に掛ける「日陰の蔓」を掛ける掛詞である。
 結句「出でぬと思へば」は、出てきたと思うと、の意で、「ぬ」は完了の助動詞である。二句の理由を倒置して添えている。

をみ:小忌。大嘗会や新嘗会などで、特に身を清めて神事に奉仕すること。また、その人
ありあけ:有明。月が空に残ったまま夜が明けること
さかづき:杯。その中に「月」を含ませる
ひかげ:日の光の「日影」と、神事で冠に掛ける植物の「日陰の蔓」を掛ける
作者
大中臣能宣
出典
拾遺和歌集
前の歌
限りなくとくとはすれどあしひきの 山ゐの水は猶ぞ凍れる
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あしひきの山ゐに摺れる衣をば 神に仕ふるしるしとぞ思ふ